「基礎工事」と「型枠工事」は何が違う?現場で混同しがちな役割をわかりやすく解説

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どちらも建設現場ではよく聞く言葉ですが、「基礎工事」と「型枠工事」の違いを正しく説明できる方は意外と少ないかもしれません。特にこれから建設業界で働いてみたいと考えている方や、求人を見て職種の違いに戸惑った方にとっては、似たような言葉が並ぶことでかえって混乱する原因になりがちです。「基礎をつくる仕事」としてひとくくりにされやすいこの2つですが、実際には役割も手順も異なる作業です。工事の順番やチームの分担、必要とされる技術の内容も明確に違っており、それぞれにしかないやりがいも存在します。この記事では、そうした“わかりにくさ”の正体に目を向け、現場での具体的な役割や作業内容の違いを丁寧に言葉にしていきます。名前は似ていても、実際にはまったく別の専門性を持つ工事。その違いを知ることで、職種選びや進路のヒントにもなるはずです。




基礎工事とは何か?建物を支える「地面づくり」の役割

基礎工事とは、建物の重さをしっかりと地面に伝えるための「土台」をつくる工事です。建物の種類や地盤の状態に応じて、その内容は変わりますが、共通しているのは「構造物が安全に、長く存在し続けるために必要な作業」であること。たとえば、地面を掘り下げる「掘削」から始まり、砕石を敷いて地盤を安定させ、鉄筋を組み、コンクリートを流し込んで固めていくという一連の工程が含まれます。これにより、建物全体の荷重が偏らず、沈下や傾きといったリスクを防ぐことができます。


また、基礎工事には「ベタ基礎」や「布基礎」などの種類があり、現場ごとの設計に応じて施工方法が選ばれます。これらの作業は見えなくなる部分であるにもかかわらず、建物の寿命や安全性に直結する極めて重要な領域です。職人に求められるのは、図面を読み取る力、施工精度を保つ慎重さ、そして何よりも“見えないところで手を抜かない”という責任感です。現場全体の工期にも大きく関わるため、他業種との連携を図りながら確実に進める力も必要です。地味に見えがちですが、実は工事全体の「要」ともいえる工程なのです。




型枠工事とは何か?コンクリートを形づくる精密な仕事

型枠工事とは、コンクリートを所定の形に固めるために必要な「枠」をつくる作業です。鉄筋を組んだ後、その周囲に木製や合板の型枠を立て込み、そこにコンクリートを流し込んで、しっかりとした形状に仕上げるのがこの工事の主な役割です。基礎工事の中に含まれる作業ではありますが、実際には別の職種として扱われることが多く、型枠大工と呼ばれる専門職が担当します。


型枠の出来が悪ければ、コンクリートが膨らんだり欠けたりして、建物全体の精度に影響が出てしまいます。そのため、図面通りにミリ単位の精度で組み上げることが求められ、墨出し(位置決め)やレベル確認といった細かい調整も欠かせません。また、気温や湿度によってコンクリートの性質が微妙に変わるため、それに合わせた段取りや調整力も必要です。


現場では、鉄筋工やコンクリート業者と密接に連携することも多く、工程管理の要所を担う役割でもあります。作業のスピードと精度の両立が求められる中で、型枠工は「建物のかたちをつくる」職人としての責任を背負っています。目立ちにくいながらも、建物の外観や耐久性に直結するため、建設業界の中でも特に精密性と経験値が問われる分野です。




現場での関係性|工程の中でどう連携しているか

基礎工事と型枠工事は、それぞれ独立した作業に見えて、実際の現場では密接に関わり合っています。一般的な流れとしては、まず掘削や地業(地盤整備)を行ったあと、鉄筋を配置し、その上から型枠工事へと進みます。型枠が完成したあとにコンクリートが打設され、所定の形に固まった段階で型枠を外す、というのが一連の工程です。つまり、型枠工事は基礎工事の一部でありながらも、明確に工程上の“一区切り”として機能している重要なパートです。


このように役割が分かれている以上、現場ではそれぞれの工程を行う職人たちの連携が欠かせません。たとえば、掘削した深さが数センチずれるだけで型枠がうまく設置できず、後工程に影響が出ることもあります。逆に、型枠側が正確に墨出しできなければ、コンクリートを流し込んでも設計通りの寸法にならず、やり直しが発生してしまいます。


そのため、工程ごとの正確さに加え、お互いの作業を理解し、次工程を意識した動きが必要になります。「次の職人が作業しやすいように仕上げる」意識が現場全体の効率と品質を高めていきます。とくに集合住宅や大型施設のような複雑な現場では、日々の打ち合わせや作業中の声かけなどが、仕上がりの良さを大きく左右します。技術だけでなく、チームとしての連携力が問われる理由はそこにあります。




それぞれの職種の違いと求められるスキル

基礎工事と型枠工事は、どちらも建物の基盤を支える大切な仕事ですが、求められる技術や視点には明確な違いがあります。基礎工事では、まず地面の状態を読み取り、掘削や転圧(地面を固める作業)などを正確に行う力が問われます。重機の操作や測量機器の扱い、地面の高低差を読み取る感覚も必要です。現場ごとの条件に応じた判断が求められるため、臨機応変な対応力が鍛えられる現場でもあります。


一方で型枠工事は、設計図面に忠実に従って「かたち」を生み出す仕事です。木材やパネルを正確に加工・組み立て、コンクリートの流れや気泡にも配慮しながら、ズレや隙間のない枠をつくり上げます。使う道具も異なり、鋸やハンマーを駆使する大工的な感覚と、精密な寸法管理が求められる職種です。


また、キャリアの築き方にも違いがあります。基礎工事では重機資格を取得して土工からオペレーターへと進む道や、現場監督へのステップアップが見込まれます。型枠工事では、職長や技能士などの資格を取得し、型枠専門の高い技術者を目指す道があります。どちらも未経験から始めることは可能ですが、興味のある作業内容や自分の得意分野に応じて選ぶことが、長く続ける上でのヒントになります。


もし、これから現場の仕事に関わりたいと考えているなら、まずは自分がどのような動きや作業に興味を持てそうか、じっくりと想像してみるのが良いスタートです。実際の現場では、どちらの職種も必要不可欠な存在として、互いに支え合いながら働いています。


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まとめ|キャリアや工事発注時の判断に活かす違いの理解

基礎工事と型枠工事は、どちらも建物の「足元」をつくる仕事ですが、その役割や求められる技術、視点はまったく異なります。基礎工事は地面と建物をつなぐための構造を築く作業、型枠工事はコンクリートを正確な形に仕上げる作業。その違いを理解することで、現場での混乱や誤解を防ぐだけでなく、将来的な進路選びや職人としての成長にも大きく役立ちます。


どちらの仕事にも専門性があり、経験を積むことでしか身につかない技術があります。自分に合った現場や仕事のスタイルを見極めたい方にとって、今回の内容がその判断の一助となれば幸いです。


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